【広告制作の現場から】薬機法と景表法の違いとは?注意すべき表現について

薬機・景表法

こんにちは。コピー/セールスライターのPです。私は約10年にわたって、薬機法・景表法とは切っても切れない関係にある、健康食品などの通販広告を制作してきました。

この記事では薬機法・景表法それぞれの法律の要点違いについて、できるだけ分かりやすく説明しています。

さらに、広告を制作するうえで注意すべき表現についても、代表的なものをいくつか紹介しました。

薬機法と景表法は、医薬品やサプリメントなど健康食品の広告はもちろんのこと、広告制作に携わる人間なら必ず理解しておきたい法律です。この機会に理解を深めておきましょう。

薬機法は、医薬品・医療機器・化粧品などが対象の法律

かつて薬事法と呼ばれていましたが、2014年の改正によって薬機法と呼ばれるようになりました。

対象となる商品は、医薬品はもちろん、医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品です。製造から販売、市販後の安全対策までのすべてが規制の対象になります。

また、規制の対象者は「何人も」と定められています。違反によって広告制作に関わったすべての人(事業者、広告代理店、制作会社他全員)が罰せられる可能性があります。

罰則は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金です。

さらに、2021年からは課徴金制度も施行されました。違反によって納付を命じられると、事業者は売上の4.5%を課徴金として納付しなければなりません。

なぜ、サプリメントの広告が薬機法で指摘される?

規制対象ではないサプリメントなど健康食品も無関係ではありません。

医薬品と同じように効果を表現すると薬機法違反となります。実際に違反を指摘された広告も少なくありません。

薬機法は医薬品等の安全性や有効性を確保することが目的です。医薬品ではないサプリメントなどの健康食品が、医薬品と同じように有効性を謳ってしまうと、広告を見た消費者は医薬品とサプリメントの違いを区別できなくなってしまいます。これでは適切な選択ができないだけでなく、場合によっては命に係わる事態にもなりかねません。

こうした状況を避けるため、医薬品ではない商品が医薬品と同じように効果を謳うことは禁じられているのです。

たまに「研究によって効果のあることが分かっているのに表現できないのはおかしい!」という意見も耳にしますが、国の立場からすると「それなら医薬品として認可を受けてください。既存の医薬品を守るために必要なことなのです」という理屈なのではないかと思います。

化粧品は「広告で表現できる効能」が薬機法で定められている

化粧品は基礎化粧品やメーキャップ化粧品はもちろん、香水やシャンプーリンス、石鹸などのことを指します。

医薬品などとは異なり、化粧品では表現できる効能が具体的に定められています。

「頭皮、毛髪を正常にする」「肌のキメを整える」「乾燥による小ジワを目立たなくする」など56個あり、この範囲内でしか効能を表現することはできません。

【参考】化粧品の効能の範囲の改訂について

なお、医薬部外品や薬用化粧品は、表現できる効果効能の範囲が異なります。

景表法とは、パッケージやHP、広告などの表示が対象の法律

正式には「不当景品類及び不当表示防止法」といい、「景表法」や「景品表示法」などと略されます。

不当な表示から消費者を守るための法律で、すべての商品・サービスが対象となります。不当な表示とは、商品やサービスの広告などで品質や内容、価格などを偽ったり大げさに表示したもののことを指します。

消費者が商品やサービスを選ぶとき、広告やパッケージは購入するかしないかの大きな判断材料です。表示にウソがあると、当然手に入ると思っていた水準よりも質の低い商品やサービスを購入することになってしまう可能性があります。これを防ぐためにあるのが景表法です。

消費者庁の管轄で積極的にパトロールが行われています。

規制の対象になるのは事業者です。違反行為が認められた場合、消費者庁は事業者に対して措置命令を行います。措置命令とは、違反表示の市場からの排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことを命じるものです。

また、違反が要件を満たす場合、消費者庁は事業者に対して課徴金の納付も命じます。納付額は売上の3%です。

薬機法と景表法の比較一覧

薬機法景表法
正式名称医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)不当景品類及び不当表示防止法
規制の対象医薬品、医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品/製造から販売、市販後の安全対策までのすべて商品・サービス/パッケージや広告などの表示
規制の対象者関係者すべて事業者
罰則2年以下の懲役、200万円以下の罰金、もしくは両方。課徴金(売上の4.5%)措置命令、課徴金(売上の3%)
管轄厚生労働省消費者庁

規制の範囲が一部重なる薬機法と景表法

医薬品や化粧品などの製造から市販後の安全対策までを規制する薬機法と、あらゆる商品の表示内容を規制する景表法。

2つの法律で規制する範囲が重なるのは、薬機法では「虚偽・誇大広告」、景表法では「有利誤認」「優良誤認」と呼ばれる領域の一部分です。

具体的には医薬品的な効果や効能を謳いたい商品(医薬品、化粧品、サプリメントなど)の広告やパッケージなどの表現がそれに当たります。

注意すべき表現

効果効能の表現

特に注意すべきは効果効能の表現でしょう。広告を見る人に「欲しい」と思ってもらえそうな表現は難しい場合がほとんどと言っても過言ではありません。また、商品のジャンルによっても表現できる内容が異なるため注意が必要です。

医薬品

虚偽や誇大な表現は禁じられています。どのような表現が虚偽・誇大に当たるかの判断はとても厳密です。

例えば、「頭痛に効く」頭痛薬を広告する際、「頭痛が治る」と言ってもよさそうに思われるかもしれません。しかし、この表現は誇大な表現として指摘されるでしょう。「頭痛に効く」ことは認められていても、確実に「頭痛が治る」かは確認できないからです。

このように、効果を表現にあたっては細心の注意が必要になります。

健康食品

医薬品のような効果効能を表現することはできません。効果がある箇所として体の一部(おなか、肝臓、ひざ等)を示すだけでも違反となります。

サプリメントなど健康食品の広告が「元気」「健康」または「すっきり」「テキパキ」など漠然とした表現になっているのはこのためです。

ただし、「すっきり」など漠然とした言葉であっても、結果的に効能を暗示している場合は違反となります。例えば、便秘解消商品の広告で、「毎日すっきり!」というコピーのそばに、トイレから出てくる人物の写真やイラストを使用した場合、「便秘解消」を暗示するとしてNGになるでしょう。

なお、特定保健用食品(トクホ)は認可を得た内容、機能性表示食品は国に届け出た内容それぞれの範囲内で体の部位や効果効能を表現することができます。

最上級表現、No.1表示

「最高」「最大」「究極」といった最上級表現や、「日本一」「〇〇ランキング1位」などNo.1表示も注意が必要です。いずれも客観的かつ公正な調査結果による裏付けがなければ使用することはできません。

景表法の「優良誤認」もしくは「有利誤認」として指摘される可能性があります。

体験談

以前は「個人の感想です」などの打ち消し表示を入れておけば大丈夫、といわれていました。しかし、消費者庁は「打ち消し表示に体験談で示された効果を打ち消すだけの力は認められない」としています。

体験談で効果効能を表現することは避け、使用感や使用方法、香り、味の表現に留めましょう。

価格まわりの表記

通常価格にも関わらず、架空の定価を設定するなどして、大幅に割引しているかのように見せるなどの不当な表示はもちろん違反です。

また、「このホームページだけの特別価格です」と謳っているにも関わらず、他のサイトでも同じ価格で購入できる場合なども違反となります。

まとめ

この他にも注意すべき表現は「医薬関係者の推薦」など、まだまだ細部にわたってたくさんあります。さらに、表現の判断基準は時代の変化などに合わせて変わっていきます。

常に変化に目を光らせて、最新の情報をキャッチアップしつづけることが、違反のない効果的な広告を制作するには重要です。

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